耽美派の作家 ―永井荷風と谷崎潤一郎―
永井荷風は<無智と迷信の上に幸福が築かれた遺習>が色濃く残されていた江戸情緒を愛し、とりわけ花柳界を偏向的、かつ執拗に礼讃した。文壇では耽美派と呼ばれ遊蕩文学とも揶揄された。しかし荷風の文学は花柳界に溺れたものではなく、ある反抗的精神から生まれたものであったと文芸評論家の中村光夫氏は指摘する。一方、荷風より徹底した耽美派であった谷崎潤一郎は、もはや荷風のような思想の骨格がなく<女性の美が男性にもたらす悪徳>の殉教者たらんとして作品を発表し続け、世の話題となっていく。
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