歌人は五七五七七の言葉の断片の中に豊饒な世界観を投影する。堀口末子は人が生きていくうえで背負わなければならない感情の塊を空気のように包み込み、素直な心で淡々と歌にする。そして、わかりやすい。彼女のわかりやすいは平凡なこととは違う。わかりやすさの中に人生の深みが静かに横たわっているからだ。愛の表現こそが短歌の骨頂ならば、主婦の堀口が好んで詠う身近な家族や庭先の四季は、いつもやさしい愛の歌で満たされている。ぜひ声にして詠んでもらいたい歌集だ。
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