筆者が子供の頃の百貨店は特別な存在だった。公園で泥んこになった服は着替えさせられ、靴までがピカピカのものに変わった。1階は大人の女性の香水の匂いで溢れ、モデルのような美しいエレベーターガールが各フロアの催しを案内してくれた。子供たちは、両親が買い物をしている間、屋上の遊園地で過ごした。その百貨店がフルラインの商品構成をする新興の大型スーパーマーケットや専門のディスカントショップの誕生で衰退していった。しかし百貨店の消滅は戦前からの日本の気品とおもてなし文化の消滅でもあった。
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