病いをなおす木
近代医学が発達する前では、病気は我々の想像をはるかに超えた生きていくうえで大きな悲しみと重圧であったに違いない。ましてや子供の病気はなおさらであった。そのため子供の夜泣きを鎮めたり、乳の出を豊かにする「木の伝説」は全国にある。聖徳太子や空海や親鸞が杉の枝を逆さにして土に刺すと、その枝から根が生え、葉が茂り、大木になり、やがて神が宿り、人々を病から救ったという。日本の人々は、木に精霊を感じ取り、素直に願いを託したのだ。木は人々を哀れに想い、多くの願いを幹に吸収して、やがて村の神木になっていった。
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