山口線他
高校時代、学校に馴染めずに家出した。宇野線からフェリーに乗って高松に渡り、そこから鉄道で大歩危、小歩危峡を越えて高知へと向かった。桂浜の坂本竜馬像に挨拶して小さく捻じれた僕の心を叱ってほしかったのだ。四国の険しい山を越えるには長いこと列車に揺られなければならなかった。実のところローカル線はあまり好きではなかった。電車酔いするのだ。椅子も硬いし、窓も重たくて開かないし、臨席の人は家出少年を通告するおせっかいな大人に見えた。その時、社内販売の売り子が通過した。年齢はあまり変わらないように見えた。可愛かった。食べもしないのにみかんを買ってしまった。
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