政治と人間性
秦の始皇帝は儒教の本のみならず儒者までも焼き殺した。いわゆる「焚書坑儒」だ。吉田茂首相は東大の政治学者の南原繁総長を「曲学阿世の徒」と非難した。政治と政治学者は絶えず緊張感を持ち続けてきた。しかし最近では社会科学の狭い学問領域に留まり、専門用語を並べたて重箱の隅を楊枝でほじくるような学者が増えているように思えてならない。国家は政治権力でもって繁栄をもたらす一方で、戦争、革命、暴動、テロ、扇動をもたらす。政治学者が現実政治との緊張感を失い、苦悶する哲学者でなくなるとき、政治学はもはや「敗北の学問」になるといえよう。