起業家魂
1985年の通信自由化が生み出す巨大ビジネスの意味について理解するには、私はまだ貧しい学生で、京都の片隅の下宿で「ドイツイデオロギー」や「風の歌を聴け」を読み耽っていた。明治以来、これまで100年にわたって国が独占していた通信事業すなわち「電話」が民営化されると、その蜜に大手から中小・ベンチャーまでが群がって群雄割拠の時代が到来した。熾烈なパイ獲得と値下げ競争が繰り広げられた結果、倒産、淘汰、合併が相次いだ。まさに、やがて来るIT革命の前哨戦だった。政治にしろ経済にしろ時代の転換期には、天は多くの英雄を拾い上げては終わると容赦なく使い捨てていった。