太平洋両岸詩集
父の留学に伴い、我が家は3年間、東海岸のボストンの街で暮らした。雪の多いロンドンのような街だった。帰国が決まると母と姉は、このままアメリカで暮らしたいと拒んだ。もし父が望郷の念にとらわれず帰国しなかったら、私には日系人としての人生が待ち受けていた。偏見や差別に悩んだかもしれない。徴兵され、どこかの国で亡くなったかもしれない。観光や仕事で訪れるアメリカと棲むアメリカは違うのだ。この詩集は主にアメリカに移住したアジア系二世、三世の作品で構成されている。母国で暮らす我々が詩から放たれる彼等の魂の叫びをどれだけ理解できるのかは疑問だ。