こころの刹那を捉えて
心の中に浮かぶ、まるで蜃気楼のような一瞬の感情を逃がさず限られた文字の中に閉じ込めて、芸術までに昇華する。この醍醐味は私のような凡人には分からないし、そもそも出来ない。天から才能をもらった人だけがなせるわざだと思う。「春の陽に光れる砂をふみゆくに重たきものは足のみならず」「夕焼けの今美しとのみ告げてくる電話あり窓あけてみむ」こんな歌を詠まれると、我々読み手の頭にあっという間に情景が浮かんでくるのだ。原田昭子氏は二児の母であり、学者の妻でもあったと記されている。どんなに忙しい日々の中であっても歌人は刹那を捉えることをやめないのだろう。