生命の記憶
「十月十日」我々は母親の羊水の中で成長していく。まずはエラをもった魚として誕生する。新妻が「わたしできたかもしれない」と仕事帰りの夫にうれしい話をしている時に、胎児の世界ではドラマが起こっている。エラが肺になり「海水から上陸する準備」が整いつつあるのだ。「やがて男の子かな女の子かな」という気の早い話を夫婦でしているうちに胎児は両生類から爬虫類となり、爬虫類から哺乳類になり、やがて脳が急激に変化してヒトへとなっていく。古生代から辿った何億年もの生命の歴史を我々の身体がちゃんと「記憶」していることを胎児は母親の羊水の中で証明しているのだ。