人生を綴った大正生まれの歌人
近年では大正時代(1912年~1926年)生まれの人たちが一番激動の日々を過ごされたと思う。関東大震災、戦争、焼け跡、貧困、そして経済復興。「浮雲」の作者も大正生まれだ。日記のかわりに、その時々の情念や光景を短歌にして綴った。戦地では「泥水をすすり、草をかみ」ながら戦った結果、敵兵に足を射貫かれた。そして敗戦。結婚し子供を授かり懸命に働いて家も建てた。平和が訪れた日本での初めての運動会。彼は娘を背負い、撃たれた足を引き摺りながらも懸命に運動場を走った。そこに大正男の人生がすべて凝縮されていた。尊敬したい。