憧れ色の思い出
学生時代、新幹線には食堂車があった。京都から乗ってビールやカツレツを頼んで車窓からの夜景を楽しんだ。高速でもテーブルクロスの上のコップは、けっしてこぼれなかった。値段はびっくりするくらい高かったが次の名古屋駅から父が合流予定だったので安心していた。ところが名古屋を過ぎても父はなかなか現れない。だんだん焦ってきた。携帯電話のない時代なので確認しようがない。美人なウェイトレスに言われるままにビールの追加もしていた。浜松を過ぎたあたりで、ようやく父が食堂車に姿を現した。「おまえとの約束を忘れていた。でも、なんでそんなに飲んだりしてるんだ」と叱られた。